振り返りが後回しになる理由と、1日で終える発想

道の駅や観光施設では、春の山菜まつり、夏の夜市、秋の新米フェア、冬の雪まつりと、イベントが年に何本も重なります。終わるたびに次の準備へ追われ、年度末に「何が良くて何が課題だったか」を思い出せない。新潟の現場でもよく聞く悩みです。

原因の多くは、記録が散らばっていることです。売上はレジ、来場者は手書きの日報、反響はSNSやアンケートと、置き場所がバラバラです。AIは「散らばった材料を読んで整理し、文章にする」作業が得意です。材料さえ集めれば、分析と報告書の下書きは1日で形になります。

図1: 材料集めから報告書化までを午前・午後に分けて進める4ステップ

手順:午前は材料、午後はAI

  1. イベント一覧を作る:名称、開催日、天気、担当者を1行ずつ書き出す。
  2. 数字を集める:売上、来場者数、出店者数、アンケート件数。スマホで撮った日報の写真も可。
  3. 表に整える:Excelかスプレッドシートで、列名と単位をそろえる。
  4. AIに分析させる:下のプロンプトで、良かった点・課題・来年の改善案を出させる。
  5. 人が直す:現場を知る人が、事実とずれた箇所を修正して報告書にする。

なぜこの順番か。AIに先に文章を書かせると、数字の裏付けがないまま「それらしい感想」が並びます。表を先に作り、数字を根拠にさせる順番だと、後から見直しやすくなります。

表の列はこの8つから始める

手順3の表は、最初から細かく作り込む必要はありません。次の8列があれば、AIが比べるには十分です。

列名 書き方の例
イベント名 夏の夜市
開催日 8月の第1土曜
天気 晴れ・雨・雪など一語で
売上 円単位でそろえる
来場者数 人数で数えたか台数かを列名に書く
出店者数 店舗数
アンケート件数 回収できた枚数
反響メモ SNSの反応や、来場者の声を一言

空欄があっても構いません。空欄は空欄のまま渡し、AIには「不明」と扱わせます。無理に埋めた推定値が混ざるほうが、分析をゆがめます。

1日の進め方の目安

  • 午前の前半:担当者に声をかけ、レジの集計、日報、アンケートを1か所に集める。
  • 午前の後半:表に入力し、数字の定義(人数か台数か、税込か税抜か)をそろえる。
  • 午後の前半:プロンプトに貼って下書きを出し、根拠の数字と照らし合わせる。
  • 午後の後半:担当者と30分ほど読み合わせ、報告書の形に直す。

1人で抱えず、材料集めだけはイベントの担当者に頼むと、半日で済む場合もあります。

そのまま使えるプロンプト全文

表をコピーして、【 】の部分だけ差し替えて貼ってください。

あなたは新潟の道の駅で働く、経験豊富な運営企画担当です。
以下は【施設名】の【年度】のイベント実績表です。

【ここに表を貼る】

次の順で整理してください。
1. イベントごとに、売上・来場者数の前年比や、他のイベントとの比較を1行で要約
2. 良かった点を3つ(必ず表の数字を根拠に)
3. 課題を3つ(表にない原因は「推測」と明記)
4. 来年に向けた改善案を5つ(費用が小さい順)
5. 表から読み取れないことで、追加で確認すべき事項

数字を新たに作らないこと。わからない点は「不明」と書くこと。

出てきた文章は下書きです。第4項の改善案は、そのまま採用せず、現場の人手と予算に合うか会議で確認してください。

改善案を選ぶときの分かれ目は「誰がやるか」が決まるかどうかです。担当者と時期まで書ける案は来年の計画に入れ、書けない案は「検討事項」として報告書の末尾に分けておきます。全部を採用しようとすると、どれも中途半端に終わりがちです。

現場でよくある落とし穴

  • 数字の定義が違う:来場者を「車の台数」で数えた月と「人数」で数えた月が混ざる。集計前に定義を統一します。
  • 感想だけをAIに書かせる:もっともらしい文章になるが、根拠が弱い。数字の表を先に渡し、推測は推測と書かせます。
  • 個人情報をそのまま貼る:アンケートの氏名や電話番号は、貼る前に消します。

図2: 数字の定義・感想の依頼・個人情報の3つの落とし穴と、それぞれの対策

明日やれる一歩

まず、今年いちばん規模の大きかったイベント1本だけを選び、売上・来場者数・天気・反響を5行のメモにしてください。全イベントを一気に集めようとすると止まるので、1本で試すのがコツです。そのメモを上のプロンプトに貼れば、振り返りの型が体感できます。型ができれば、残りのイベントは同じ表に足していくだけです。AIと設計の型があれば、自社で振り返りの仕組みを作れます。