なぜアナウンス原稿は後回しになるのか

道の駅や直売所の店頭アナウンスは、季節ごとに内容が変わります。新米、きのこ、雪下ろしの時期の温かい品、年末の餅。毎回ゼロから考えると、忙しい開店前には手が回らず、結局去年の原稿を読み回しがちです。

AIは、この「ゼロから考える部分」を肩代わりするのが得意です。ただし任せきりにすると、品名や価格の間違いが混ざります。この記事では、人間が確認する場所を決めたうえで、AIに下書きを作らせる手順を紹介します。

図1: アナウンス原稿づくり4ステップの流れ

手順1: 素材を3点だけメモする

最初に、AIへ渡す材料を用意します。長い必要はありません。次の3点があれば十分です。

  1. 旬と商品: 今日の主役は何か、産地、おすすめの食べ方
  2. 客層と場面: 観光客が多いか地元客か、混む時間帯
  3. 秒数と口調: 30秒程度、やさしい話し言葉

明日やれる最初の一歩は、今いちばん売りたい商品を1つ決め、この3点をスマホのメモに書くことです。

図2: AIに渡す素材メモ3点セット

手順2: プロンプトで下書きを作らせる

次の文章をそのまま貼り、【】の中だけ書き換えてください。

あなたは新潟の道の駅の店内放送担当です。
次の条件で、店頭アナウンス原稿を3案作ってください。
・主役の商品: 【南魚沼産の新米】
・季節感: 【稲刈りが終わった10月】
・客層: 【週末の観光客、車での来店が中心】
・長さ: 読み上げて30秒(約150字)
・口調: やさしい話し言葉。1文は40字以内
・禁止: 「絶対」「日本一」などの断定、書かれていない価格や産地
・最後に、確認が必要な事実を箇条書きで添えること

最後の一行が肝です。AIに「自分で怪しい点を申告させる」と、人間が確認する場所が明確になります。

手順3: 声に出して直す

下書きは必ず自分の声で読みます。目で読むと気づかない問題が、声に出すと見つかります。

  • 息が続かない長い文は、2文に割る
  • 同じ語尾が続くなら、言い方を変える
  • 読みにくい漢字は、ひらがなにする

現場でよくある落とし穴は、文字としては自然でも、スピーカーから流すと聞き取れない言葉が混ざることです。「新米」と「新前」のように、音で紛らわしい語は特に注意してください。順番を「下書き→音読→事実確認」にしているのは、音読で文が変わると、確認済みの事実がずれることがあるためです。事実確認は最後に1回で済ませるのが効率的です。

手順4: 完成原稿をひな形にして残す

直し終えた原稿は、日付と商品名を空欄にしたひな形として保存します。次の季節は、そのひな形と新しい素材メモをAIへ渡し、「前回と同じ雰囲気で」と頼めば、口調がそろいます。

春は山菜、夏はスイカや枝豆、秋は新米ときのこ、冬は根菜と餅。年4回のひな形が貯まるころには、準備時間はかなり短くなるはずです。

場面別: 3案のどれを選ぶか

AIが出した3案は、場面で選び分けます。判断の目安は次のとおりです。

  • 週末の昼前で人が多いとき: 一番短い案を選ぶ。混雑した売り場では長い放送は聞かれず、商品名と置いてある場所が先に出てくる案が向いています
  • 平日の午後で落ち着いているとき: 食べ方や産地の話が入った案を選ぶ。立ち止まって聞いてくれる人が増え、会話のきっかけにもなります
  • 売り切れが近いとき: 「本日分は残りわずか」のように、数量に触れる案は使わず、数を確認してから自分で一文足す。AIは在庫を知らないためです

たとえば開店前、レジ担当の方が3案を読み比べ、一番短い案に「棚は入口を入って右です」と一文だけ足して放送する、という使い方でも十分に役立ちます。完璧な原稿を目指すより、毎日少しずつ直して使うほうが続きます。

手順を続けるための小さな工夫

つまずきやすいのは、2回目以降に素材メモを書くのが面倒になることです。そこで、メモ用の欄を決めておきます。たとえば「主役の商品」「いちばん伝えたいこと」「今日だけの事情(雨、イベントなど)」の3行だけを毎朝書き換えれば、残りはひな形が補ってくれます。スタッフ同士で共有するなら、ひな形と3行メモを同じ場所に置き、誰が書いても同じ口調になるようにしておくと安心です。

気をつけること

価格、産地、数量、営業時間は、AIが自信ありげに間違えることがあります。必ず売り場の表示と見比べてください。個人名やお客様の情報をプロンプトに入れないことも、あわせて守りましょう。

まずは今日の主役商品で、30秒の原稿を1本作ってみてください。