なぜ「表示ルール」を先に決めるのか
道の駅の商品POP、観光パンフ、SNS投稿でAIを使い始めると、すぐ「これ、AIで作ったと書くべき?」という声が出ます。現場でよくある落とし穴は、担当者ごとに判断が違い、ある投稿には表示があり、別の投稿にはない状態になることです。後からお客様や取引先に聞かれても、会社として説明できません。
だから、表示するかどうかは「その場の感覚」ではなく、社内ルールとして先に決めます。なお、法令や各媒体の規約は変わります。最終的な判断は、公式情報や専門家で確認してください。
ルールを決める5ステップ
- 制作物を洗い出す:自社が外に出しているものを書き出します。商品POP、チラシ、SNS、ホームページ、観光案内文、ポスターなど。
- AIの関与度を3段階に分ける:A=誤字直し・言い換えなど下書き補助、B=文章をAIが主に作り人が確認、C=画像・人物・音声などをAIが生成。
- 表示する線を決める:目安はAは任意、Bは社外向けに小さく表示、Cは見える形で表示。
- 表示文言を決める:統一した一文を用意します。
- 記録欄と責任者を決める:誰が、どの区分で作ったかを残します。
なぜこの順番が良いのか
最初に文言から決めたくなりますが、おすすめしません。制作物を見ないまま文言を作ると、「全部に書く」か「どれにも書かない」の極端な運用になりがちだからです。洗い出し→関与度の分類→線引き、の順なら、現場が納得しやすい線が引けます。
6次産業の商品なら、たとえば「味の説明文はB、パッケージのイメージ画像がCなら、画像側に表示する」といった具合に、物ごとに決められます。
そのまま使えるひな形
表示文言の例
A:(表示なし・任意)
B:この文章はAIの支援を受けて作成し、担当者が確認しています。
C:この画像はAIで生成したイメージです。実際の商品・景色とは異なる場合があります。
制作物の記録欄(スプレッドシートの列)
制作日 / 制作物名 / 区分(A・B・C) / 使ったAI / 確認者 / 表示した場所
AIにルール案のたたき台を作らせるプロンプト
あなたは中小企業の広報ルール作りの補助役です。
当社は新潟の道の駅で、商品POP・SNS・観光案内を制作しています。
AIの関与度をA(下書き補助)、B(文章を主に生成)、C(画像・音声を生成)に分け、
区分ごとの表示の要否と文言、記録すべき項目を、A4一枚の社内ルール案にしてください。
法令や媒体規約は断定せず、「要確認」の項目を最後に列挙してください。
現場での使い方の場面
たとえば観光協会の担当者が、地元の祭りを紹介するSNS投稿を作るとします。AIに下書きを作らせ、日程や場所は自分で確かめて直したなら区分はBです。記録欄に「区分B・確認者・投稿先」を書き、文末に表示文言を添えます。一方、祭りのイメージ画像をAIで作った場合は区分Cです。実際の風景と取り違えられないよう、画像のそばに「AIで生成したイメージ」と書きます。このように、投稿のたびに区分を一度確かめる習慣がつくと、迷う時間が減ります。
判断の分かれ目:迷いやすい3つのケース
線引きで実際に迷うのは、次のような場面です。
- AIが作った下書きを、ほぼ全部書き直した場合:中身を自分の言葉に置き換えたなら、区分Aとして扱って構いません。ただし「どこまで直したら書き直しか」を社内で一つ決めておきます。たとえば「元の文が半分以上残っていればB」のように、数字で線を引くと揉めません。
- AIで作った背景素材に、自社で撮った商品写真を重ねた場合:画像の一部でもAI生成が入っていれば、区分Cとして扱います。どの部分がAIかを記録欄に一言残しておくと、後から聞かれても答えられます。
- お客様の口コミを、AIで要約して掲示する場合:元の声を取り違えるおそれがあるので、区分Bとし、原文を残したうえで表示します。
運用で起きやすいつまずき
- 区分が曖昧:迷ったら一段上の区分にする、と書いておくと揉めません。
- 記録が続かない:投稿の下書き時点で記録欄を埋める流れにすると定着します。
- ルールが古くなる:3か月に一度、見直す日をカレンダーに入れます。
- 表示が目立たず読まれない:SNSでは、表示文言が「続きを読む」の奥に隠れることがあります。投稿の冒頭か画像の中に入れるなど、見える位置を決めておきます。
- 外部の人が作る場合:デザイン会社やカメラマンに依頼するときは、AIを使ったかを納品時に申告してもらう一文を、発注書に入れておきます。
ルールを決めたあとの周知のしかた
ルールは作っただけでは使われません。決まった日に、関わる全員(パートさん、兼務の担当者も含む)に5分だけ集まってもらい、A・B・Cの区分と表示文言を口頭で説明します。そのうえで、ひな形の文言と記録欄をまとめたA4一枚を、制作に使うパソコンの近くか共有フォルダに置きます。新しく入った人にも、同じ一枚を渡せば説明が済みます。最初の1か月は、迷った投稿を責任者に見せてもらう形にすると、線引きの感覚がそろいます。
明日やれる一歩
最初の一歩は、ステップ1の洗い出しだけです。付箋でもメモでも構いません。自社が外に出している制作物を15分で書き出し、そのうちAIを使っているものに印をつけてください。ここまでできれば、ルールづくりの半分は終わっています。