AIに施設紹介文を書かせて読み返すと、「豊かな自然と温かいおもてなしが自慢の道の駅です」。間違ってはいませんが、隣の市の道の駅にもそのまま使えます。AIまかせの文章で最も起きやすい落とし穴は、誤りより「どこの会社でも言えること」になってしまうことです。
なぜ「平均的な文章」になるのか
生成AIは、学習した大量の文章から「もっともありそうな言い回し」を組み立てます。「新潟の道の駅の紹介文を書いて」とだけ頼めば、返ってくるのは全国の道の駅紹介文の平均です。四季の魅力、地元の味、心のこもった接客。どこにでも当てはまるからこそ選ばれた言葉です。
原因はAIの性能ではなく、自社にしかない情報を渡していないことです。材料が同じなら、何度書き直させても似た文章しか出てきません。
公開前の3つの点検法
公開前に次の3点を確かめてください。どれも5分で終わります。
- 社名入れ替えテスト。文中の社名・施設名・地名を、近隣の同業者に置き換えて読みます。違和感なく成立するなら、その文章は自社のものになっていません。
- 固有情報の数を数える。品種名、生産者の名前、創業年、駅からの距離、収穫の時刻。段落ごとに、自社にしかない事実が1つ以上あるかを見ます。ゼロの段落は要注意です。
- 「誰に向けた文か」を一行で言えるか。「みんな向け」の文章は、誰にも届きません。「週末に子連れで来る県内の家族」のように、読む人の顔が浮かぶかを確かめます。
たとえば直売所の枝豆POPをAIに頼み、「新鮮で甘みたっぷりの枝豆です」と返ってきたとします。社名を入れ替えても成立し、固有情報はゼロ、読み手も不明。3つとも引っかかります。「朝5時に収穫した黒埼茶豆、茹で時間は3分半がおすすめ」なら、隣の店には使えない文章です。
直し方は「書き直させる」ではなく「材料を足す」
点検で引っかかったとき、「もっと魅力的に書き直して」と頼むのは逆効果です。材料がないまま魅力を足そうとして、「絶品」「至福」のような大げさな言葉が増えるだけです。
代わりに、自社にしかない事実を3つ書き出して渡します。観光施設なら「展望デッキから見える山の名前」「地元の高校生が考えたメニュー」「冬季に営業時間が変わる理由」。こうした材料は現場の人しか持っていません。AIの得意は組み立てで、生み出すことではないのです。
続けると、「うちの固有情報は何か」を毎回考えるので、社員が自社の強みを言葉にできるようになる副産物もあります。
明日やれる一歩
最近AIに書かせた文章を1本選び、社名を近隣の同業者に置き換えて声に出して読んでみてください。成立してしまったら、自社にしかない事実を3つ書き足して、もう一度AIに組み立てさせる。この一往復で、文章は「うちの会社」のものに変わります。