放置された契約が、いちばん静かにお金を使う

生成AIの料金プランは、登録した当時のまま残りがちです。担当者が替わったのにアカウントだけ残っている、使わない人にも席(シート)が割り当てられている。道の駅や観光施設では、繁忙期の前に数人分を契約し、閑散期になっても解約を忘れる例をよく見かけます。

一件は小さな金額でも、積み重なると年単位では無視できません。年に1回、決まった型で見直せば、無駄の削減と「本当に必要な機能の確認」を同時にできます。

図1: 年次点検は「棚卸し→利用実態→判定→実行」の4ステップで進む

明日やれる一歩

まず、会社のクレジットカード明細(または請求メール)を過去12か月分開き、AI関連の請求だけを蛍光ペンで拾ってください。10分で終わります。契約の全体像が見えないまま判断すると、必ず抜け漏れが出ます。

点検の手順(4ステップ)

  1. 棚卸し:サービス名・プラン名・月額・契約者・支払い方法・更新日を表にします。個人カードで立て替えている契約も忘れずに入れます。
  2. 利用実態の確認:各アカウントの最終利用日と、月に何回使ったかを管理画面で確認します。
  3. 判定:「継続・縮小・解約・切替」のどれかを決めます。
  4. 実行と記録:解約や変更は更新日の前に行い、理由を一行残します。

順番に理由があります。実態を見る前に「高いから解約」と決めると、実は直売所の商品説明づくりで毎日使われていた、ということが起こります。金額より先に利用実態を見るのが、この順番の狙いです。

判定に使うプロンプト

棚卸し表を貼り付けて、次の文章を生成AIに渡すと、判定の下書きが作れます。

あなたは中小企業の情報システム担当の相談役です。
下の表は当社の生成AI契約の一覧です(サービス名/月額/人数/最終利用日/主な用途)。
次の基準で各行を「継続・縮小・解約・切替」に分類し、理由を一行ずつ書いてください。
- 最終利用日が60日以上前なら解約候補
- 無料プランで足りる用途なら縮小候補
- 同じ用途の契約が複数あれば統合候補
最後に、年間の削減見込み額を概算し、判断に迷う点を3つ挙げてください。
【表】(ここに貼り付け)

AIの分類はあくまで下書きです。最終判断は、現場で使っている人に「これが無くなると困るか」を聞いてから行います。

迷ったときの分かれ目

判定で迷いやすいのが「月に1〜2回しか使っていない有料契約」です。次のように分けると決めやすくなります。

  • その用途が売上や締切に直結する場合(例:観光パンフレットの多言語化、催事の案内文):回数が少なくても継続します。ただし、繁忙期だけ契約する形に変えられないか、更新単位を確認します。
  • 代わりに無料プランや他の道具で足りる場合:縮小に切り替えます。切り替える前に、無料プランで同じ作業を一度試してから決めます。

たとえば、直売所の店長が月2回だけ商品POPの文案づくりに使っているなら、まず無料プランで同じ文案が作れるかを、その場で本人と一緒に試します。作れれば縮小、作れなければ継続です。試す時間は15分もかかりません。

現場でよくある落とし穴

  • 年払いの更新日を見落とす:月払いのつもりが年払いで、解約しても返金されない場合があります。規約の返金条件を必ず確認します。
  • 繁忙期の直前に切る:観光シーズン前に解約すると、再契約に手間がかかります。見直し時期は閑散期の11〜12月がおすすめです。
  • 料金や機能が変わっている:各社のプラン内容は随時変わります。点検時は必ず公式の料金ページで現在の内容を確認してください。
  • 入力する情報のルールが決まっていない:料金だけでなく、顧客情報を入れてよいプランかどうかも同時に点検します。
  • 聞き取りを省く:たとえば6次産業の加工所では、パッケージの文案づくりに月数回しか使わないスタッフが「それは大事」と答えることがあります。回数が少なくても、他の方法で代えにくい用途かどうかを確認します。

判定のあとにやること

解約や縮小を決めたら、次の3点を行います。

  1. 解約する人には、保存したい会話や作成データを書き出してもらう期限(更新日の1週間前)を伝えます。
  2. 無料プランへ移す場合は、使える回数や機能の上限を本人に説明します。
  3. 次回の点検日(来年の同じ月)をカレンダーに入れ、棚卸し表の保存場所を共有フォルダに決めます。

表を共有しておけば、担当者が替わっても次の年に同じ手順で点検できます。

図2: 点検後の判定は「継続・縮小・解約・切替」の4つに分ける

チェックリスト

  • 過去12か月分の請求を確認した
  • 全契約を一覧表にした
  • 最終利用日を確認した
  • 利用者本人に聞き取りをした
  • 更新日と返金条件を確認した
  • 判定と理由を記録した

まずは明細を開く10分から。年に一度の点検が、AI活用を続けるための土台になります。