声で話すだけ、の便利さの裏側

商談の帰り道、車の中でスマホに向かって今日の要点を話すと、AIが整った文章のメモにしてくれる。記憶が新しいうちに残せるので、私も日常的に使っています。

ただ、話した内容が社外秘だった場合は話が別です。多くのアプリでは、声は端末の中で文字になるのではなく、運営会社のサーバーに送られて文字起こしと要約が行われます。取引先との価格や公表前の企画を、口に出した瞬間に外部へ預けているのと同じです。

図1: 音声メモアプリに話した内容がスマホから運営会社のサーバーへ渡り、保存・学習・閲覧という3つの行き先が生じる流れ

ありがちなシナリオ

6次産業の加工品を作る会社が、道の駅のバイヤーと新商品の卸価格を詰めた打ち合わせの直後、担当者が無料の音声メモアプリに一部始終を吹き込んだとします。後で規約を読むと「入力内容はサービス改善に利用する」とあり、削除の手順も不明。取引先に「あの価格の話、どこに保存されていますか」と聞かれたら、答えられません。

漏れたかどうかより、行き先を説明できないこと自体が信用の問題です。今回は会議録音の同意より手前、アプリを選ぶ段階の話です。

選び方の基準5つ

  • 学習に使われない設定にできるか: 入力内容をAIの学習に使わない選択(オプトアウト)が明記されているか。法人向けプランは初めから学習に使わない条件のことが多い。
  • 保存先と保存期間が分かるか: 音声と文字データがどの国のサーバーに、いつまで残るか。自分で消せる操作があるか。
  • 文字化のあと音声を消せるか: 文字メモが残れば音声は不要。自動削除の設定があれば安心材料になる。
  • アカウントを会社で管理できるか: 個人のスマホに個人アカウントで入れると、退職時にメモごと持ち出される。会社契約と2段階認証が基本。
  • 運営元と規約を日本語で確認できるか: 問い合わせ先が分からないアプリに、社外秘を預ける理由はない。

5つすべてを満たすアプリは多くありません。満たさないなら、そのアプリには「社外秘は話さない」と決めて使い分ければ済みます。

現場からの視点

図2: 音声メモアプリを選ぶ5つの基準と、満たさない場合は社外秘を話さないという使い分けルール

現場で感じるのは、アプリの良し悪しより「何を話すか」の線引きがない会社が多いことです。「価格・個人名・未公表の企画は、会社契約のアプリ以外では話さない」という一行ルールがあるだけで、どのアプリを使っても事故はぐっと減ります。

また、現場ではスタッフが各自でアプリを入れがちです。禁止するより、会社として「これなら社外秘も可」という一本を用意する方が守られます。

明日やれる一歩

いま使っている音声メモアプリの設定画面を開き、「プライバシー」「データ」「学習」の項目を探してください。学習利用をオフにできるか、データを自分で削除できるか。この2点を見るだけで、そのアプリに社外秘を話してよいかの答えはほぼ出ます。答えが出ないなら、社外秘はそのアプリに話さない。それで声のメモは安心して使い続けられます。